East Venturesの村上です。
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目次
- 最近のこと
- 新規追加(3社)
- 追加調達UPDATE(1社)
- 競合追加UPDATE(2社)
- ナイススタートアップ(1社)
最近のこと
DEXであるSushiSwapの記事読んだら面白かったので、今回はこれをサマリーします。
SushiSwapというミームなネーミングのプロジェクトは、そのコミュニティの強さから最も興味深いDAOの1つ。
当初はUniswapからフォークし、Founderがトークンを売り抜けたと批判される詐欺プロジェクトとして終わりかけましたが、献身的なコミュニティの努力によって今では最もコミュニティ志向な際立つプロジェクトに成長しています。
追記(2021/11/25): 直近の状況としては失敗しているという報告も。全くコミュニティ主導ではなくなってしまっていると。それを割り引いてご覧ください🙇♂️
https://twitter.com/agdyor/status/1463756236264988672?s=21
1) SushiSwapのはじまり
SushiSwapの創設者であるChef Nomiは、DEX大手のUniswapの欠陥に気づきました。 それは
・収益配分の不公平さ
・ガバナンストークン不在の権力構造の欠陥
でした。収益配分について、Uniswapは流動性プロバイダー(LP)になることで、取引ごとに0.3%の取引手数料を稼ぐことができますが、流動性提供をやめてしまえば、当然稼げなくなります。一方Sushiは、LPがいたからプロジェクトが軌道に乗っているわけで、「止めたら稼げないのは不公平!」と考え、取引手数料の0.25%をLPに、0.05%をSUSHIトークン所有者に分配することで、流動性提供をしていなくても収益を稼げるようにしました。さらに当時Uniswapに欠けていたガバナンストークンも提供し、誰でもプロジェクトの方向性に関われるように。 つまり、継続的な収益提供とガバナンスの権利においてUniswapとの違いを打ち出したわけです。
2) ヴァンパイアアタックで流動性を強奪!
コンセプトは良しとして、ではどうやってユーザーを集めるかです。SushiSwapは"ヴァンパイアアタック"と呼ばれる手法で流動性を強奪しました。文字通り”強奪”です。具体的には下記ステップ
①まずUniswap等既存DEXで流動性提供してもらう。量に応じてSUSHIトークンを付与することでインセンティブ付け
②その条件として、流動性提供すると貰えるLPトークンをSushiSwapにデポジットさせる
③LPトークンデポジットで十分に流動性を引きつけたら、そのLPトークンを用いてUniswapからSushiSwapへと流動性を移行するLiquidity Migrationを実行
これによってUniswapから8億ドル以上の流動性(当時の流動性のうち約50%)を引き抜き、初期のユーザー集めに成功しました。
3) Founderの売り抜けで大混乱、そして・・・
ところが、FounderのChef Nomiは、Sushiの開発資金として管理していた10%のSUSHIトークンから半分引き出し、勝手に38万ETH(1,400万ドル相当)売却してしまいます。これにコミュニティは激ギレ。価格も一時10ドル付けたものが、1ドル台に大暴落の大混乱。もう終わったかに思えましたが、ここで救世主が登場。FTXのSam Bankman-Friedが「プロジェクトのキーを渡してくれれば、売った分を代わりに寄付する」とツイートしました。Chef Nomiはこれに応じてキーを渡し、彼がプロジェクトを立て直し、1週間後にはキーを9名で共同管理できるよう移行し、事なきを得ます。そして事態は急展開しChef Nomiは自分の行ったことを謝罪、38万ETHをコミュニティへ返還しました。
翌日、Chef NomiはDiscordで最後のメッセージを送り、それ以降あらゆる所から「Chef Nomi」という形では完全に消え去りました。
4) コミュニティの強さと多様なプロダクト群
Chef Nomiが消えた後もSushiが未だに前線に残り、むしろますます際立っています。実際の成果としては、Sushiは20万ユーザー、週の取扱高20億ドル、7つの多角的なプロダクト群と十分すぎるほどです。 ユニークなのはコミュニティの強さ。Sushiの起源も関係していますが、Founderが消えたことで結果的に分散化され、コミュニティ主導が強まりました。「これまでで群を抜いて最大で最も興味深いDAO」と言われることも。 数字を見ても、Sushiユーザーの22.5%がDiscordに参加しているのに対しUniswapはユーザーの8%だけだったり、提案への投票参加率も高くSushiはコミュニティが活発です。そしてこの熱量のおかげで、各開発者が自発的にレンディング〜NFTマーケットプレイスまで様々なプロダクトを7つも開発し、Uniswapと比較しても多様なプロダクト群になりました。
5) SushiSwapの過小評価と今後
SushiSwapはDEXでのシェアが約15%でUniswapに次ぐ規模で、時価総額も26億ドルほどになっていますが、Sushiはこのトラクションに比べて過小評価されています。
というのも、SushiSwapが何を目指しているのかがイマイチはっきりしないからで、Uniswapの時価総額は年間収益の13倍に対し、SushiSwapは9倍ほどで懐疑的に見られていることが分かります。Multicoin Capitalの創業者は「Sushiは、大人になっても何になりたいのかわからない、ちょっとした迷いがあるのだと思う」と述べています。 しかし、Sushiのコミュニティの熱心さと可能性は軽視できるものではありません。Shoyuという分散型NFTマーケットプレイスを強化するという道、Sushiのコアを改善しデリバティブなど拡充を図るという道などが考えられます。またUniswapがa16zなどVCから出資を受ける伝統的な雰囲気を纏っているのに比べ、Sushiは分散の利いたDAOでバックグラウンドの対照性がありこの代理戦争も注目です。
*補足: Chef Nomiがトークンを売ったことについて一応フェアに説明をすると、創設者は往々にして大量のトークンを保有しているため、これが続くと売り圧力になったり、創設者支配が強まり分散化されなくなるため、早めに売って自分の力を弱めたり価格形成すること自体はLitecoin等でも行われるなど正当性があります。このケースはそのやり方が下手くそで信頼を失ってしまったということです。
ミスしてしまいましたが、最終的な誠実さとSushiの与えた影響・衝撃を考えるとChef Nomiは素晴らしい創設者ではないかなと。
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