最速1兆円企業 FTXのクレイジーさ

最速1兆円企業 FTXのクレイジーさ

最後発の暗号通貨取引所として26ヶ月で1兆円企業に辿り着いた狂気の企業FTXについて

2021/10/3

※配信してるニュースレターの一部転載
East Venturesの村上です。
海外スタートアップDBに申請くれた人向けにニュースレターをやってきていたのですが、一部転載してみます
Twitter→ yu8muraka3
FTXという暗号通貨取引所を聞いたことがあるでしょうか。少し前に180億ドルの評価額で資金調達した会社ですが、驚くべきはスタートしてからまだ26ヶ月で到達したこと。
ファウンダーであるSam Bankman-Friedは92年生まれの29歳、暗号通貨のデリバティブ取引を中心に成長している企業ですが、それに留まらない野心溢れる会社です。Sam Bankman-Friedは効果的利他主義という行動原理を持っている点もかなり興味深いのですが、それはまた今度。
1) 起源はCrypto特化のクオンツファンド
始まりは2017年Alameda Researchという暗号通貨のクオンツを作ったところからです。当時米国とアジアの取引所の価格差にかなり乖離があり、アービトラージの機会が沢山ありました。金融畑出身のSamはそこに目を付けトレードを行った結果、最高で100億円規模のファンドに。そしてこのAlamedaでプロとしてトレーディングする中で、既存の取引所が本格的なトレーディングに耐えうるものではない貧弱であることを感じ始め、機関投資家向けの取引所、トレーダーによるトレーダーのための取引所というコンセプトでFTXを2018年に作り始め、2019年5月にリリースします。
2) 勝者も確定していた市場でなぜ最後発から勝てたか
ではなぜ既にBIGプレイヤーが乱立していた取引所の市場においてFTXは爆速で制覇できたのか。まず1つはその「狂ったスピードと狂ったリスクテイク」です。FTXは2週間足らずで1日あたりの取引量を5,000万ドルから1億5,000万ドルに増やしその2週間後には3億ドルと驚異的な成長率を実現しました。こちらは初期の開発メモで、尋常じゃない機能追加スピード。しかも金融サービス。
FTXは運用開始数ヶ月でアルトコインの先物を追加したり、レバレッジ101倍を提供したりと、Coinbaseのような慎重な取引所ではあり得ないほど”リスクを愛し許容”しました。また当時の市場環境も、Cryptoの先物市場を上位3社がほぼ独占し、その1つBitMEXは米国の規制当局による混乱中で、付け入る隙のあるタイミングでした。さらにもう一つは事業戦略。初期の取引所の課題は流動性がなく売買が成立しないことです。しかし、FTXはAlamedaから始まっているように大量のCryptoを保有していました。それを利用し初期においてAlamedaが主要なマーケットメイカーとして流動性を提供し続け、瞬時のPMFをリードしました。
3) 本格トレーダー向けの優れたプロダクト
何よりもコアはトレーダー向けというコンセプトを体現する優れたプロダクトです。FTXは他の取引所だったら落ちてしまうようなピーク時の取引高でも問題なく機能する信頼性。また他の取引所では複数の通貨を担保にする場合個別で計算されてしまうところをFTXではクロスマージンが可能で、まとめて担保にできます。これによって効率よく高い証拠金を提供することができるトレーダーフレンドリーな設計に。 そして上述した先物やオプション取引はじめ様々なデリバティブ取引ができる場にしてトレーダーを惹きつけていきました。このような戦略と優れた実行は実を結び、トレーダーのための取引所としての地位を確立。実際、総量の25%以上は月に300億ドル以上移動するグループから、50%以上は30億ドル以上移動するグループからのものです。
4) 超超超少数精鋭。FTXの特異な組織構造
FTXはCoinbaseとは対を為す文化で構成されています。Coinbaseが伝統的なシリコンバレー企業のよう規模を大きくしながら運営され、Google, Facebookなどから人材が集まってきている一方、FTXは徹底したスピード重視で、エリートぽいビッグテックの人材よりウォールストリートタイプの猛々しい人材を好みます。その象徴として、FTXの従業員数はわずか82。Coinbaseは2,780人なのにです。一人あたりの取引高は110倍の効率性(クレイジー!)。さらにさらにクレイジーなのはエンジニアの人数で、、たったの6人です。6人。。6人で月間数千億ドルの取引高を支えています。背景にあるのは組織構造で、FTXは「プロダクトマネージャー」の存在に懐疑的です。それは核となる問題の理解が不十分の場合、適切な管理やアドバイスをすることが出来ないと考えているからで、FTXでは特定のタスクをそれぞれの人が理解して、管理し、対処する方式を採用しています。それがスピードにも直結しています。
5) 全ての取引を担う野望
FTXの将来には様々なシナリオが考えられますが、興味深いのは単なるCryptoの取引に留まらないこと。Samは、支払い・カストディ・あらゆるアセットクラスへの投資を処理するお金にまつわるスーパーアプリを作りたいという願望を持っています。実際すでにFTXは株式をトークン化した機能を提供しており、テスラ株を24時間取引できたり、FTX Payというペイメントを提供しフルスタック金融アプリへの道筋を描いています。この点においてSquareのCash Appが最大のライバルですが、Samの狂気的なリスクへの姿勢とスピードはそれを可能にしうる創業者です。

さいごに

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